みんな、変態好きね~~~~!?(※昨日~本日のアクセス数参照)
昨日のブログ、あんだけ閲覧注意だって言ったのに。
……で、昨日の夜に読みましたよ、『続悪魔』。今でいうところの上下巻の「下」を。
上巻が引くほどアレだったから、読む前に結構気合いを入れたんですけど……
『続悪魔』、変態性消え失せてた~~~~ッ!!!
ふつーーーで、ふつーーーに面白かったです。面白くて一気読みでした。
っていうか、上巻の最後だけ、どうしてああなったんだろう(笑)
さらに「っていうか」、『続悪魔』を読んでみたところ、上巻の最後の変態行為に全部印象を持ってかれて、下巻に必要な要素をまったく解説していないことに気づきました。
何をやっているんだろうか(笑)
ライターとして自分のことをどうかと思いながら、『続悪魔』の感想文もちょろっと書きたいと思います。
今日は、閲覧注意でもなんでもないよ!!!
さて、昨日からの繰り返しになりますが、『悪魔』『続悪魔』の主人公は佐伯くん。
大学入学を機に名古屋から東京へ出てきて、叔母さんの家に居候中。その家の娘・照子のことが気になるやら気にならないやらで、『悪魔』のラストでとんでもない変態行為に及びます。
その詳細は、昨日のブログをチェックしてね。
ここで、いろいろ解説し忘れていた重要事項を順に挙げていくと、まず、佐伯くんは神経衰弱──今でいうところのうつ病のような状態で、大学にもほとんど通ってはおりません。日がな一日、2階の自室にこもりっきり。
強迫観念も非常に強く、何かにつけて怯えたり、またその逆で、急に自信がみなぎって、横柄な態度に出たりします。
この作品を執筆する直前まで、作者の谷崎先生自体が神経衰弱にやられていたらしく、その描写は非常に詳細で、リアリティに満ちています。
要するに、心身ともにとても不健康。
そして、ここに重要な人物がひとり。鈴木くんです。
鈴木くんは叔母の家に暮らしている書生で、亡くなった叔父が目をかけていた男であり、将来的には照子ちゃんの婿にする約束になっているんだかいないんだか。とにかく、鈴木くんはそのつもりで書生をやっております。
この鈴木くんが、またヤバい(笑)
照子ちゃんへの執着がものすごく、正直あまりにも気持ちが悪いため、以前に1度、叔母さんのほうから暇を出されているのですが、
「その時なんざ、私たち親子を恨んで、毎日々々刃物を懐にして、家の周囲をうろついてるッて騒ぎなんだろう。まあ私たちがどんなに酷いことでもしたようで世間体が悪いじゃないか。家へ入れてやらなければ、火附けぐらいはしかねないし、仕方がないから、又引き取ってやったぁね」
──谷崎潤一郎『悪魔』
鈴木くん、ストーカーじゃん。
まごうことなきストーカーじゃん。今なら通報一発でお縄の案件じゃん。
昨日もちょろっと引用しましたが、以前ブログにも書いた二葉亭四迷先生の『浮雲』も、主人公の文三くんにストーカーの気があったし、
罪にならないだけで、ストーカーおよびストーカー思考の輩って、昔々からいたんだなぁと思わされました。
よく「おっかない時代になった」とか「変な犯罪が増えた」って話をする人がおりますが、時代が変わったからといって、急に犯罪の質が変わるワケではなく、世間がそれを「罪」だと認識したというだけのことなんでしょうね。
「罪」になれば報道もされるし、広く世間にも知られることになる。
ストーカーだって、以前はただの痴話喧嘩だったはず。
多くの尊い命が奪われたのは非常に悲しい出来事ではありましたが、ストーカー規制法が成立、施行されたことは、大いなる革命であったと考えます。
……
…………
………………
……あれ?? なんだか真面目な話になっちゃった。
ふざけてるのが、唯一の私の持ち味なのに(笑)
まあいいや、話を『続悪魔』に戻しましょう。
正直、『続悪魔』の主人公は完全に鈴木くん。
すでに照子ちゃんの婚約者気取りの鈴木くんは、佐伯と照子に関係ができると(※結局できた)、それを「姦通(=今でいう浮気や不倫)」だと罵り、佐伯に対し、「照子と関係を絶ち、この家を出て行け」と迫ります。
もうね、佐伯の前では「照子」呼びだから。
マウンティングがひどい。婚約者気取りどころか、もはや夫気取りだよね。
でも、いるよね、こういう人。いわゆる勘違い野郎という部類なんだろうけど、頭のなかで悶々と考えているうちに、勘違いが勝手に10歩も20歩も先へ行っちゃって、それがいつの間にか本人にとっては真実になっちゃう、ってヤツ。
この前も似たような人がいたよ、1回なんとなく酒飲みに行ったら、その日から「夢はさぁ~」って、急に「俺全部知ってる」感出してきた人。
誰だよ親友かよッ、10歩も20歩も先行ったなぁ、おいッ!!! 距離の取り方下手くそかッ……を、マイルドにしてオブラートに二重三重でくるんでお伝えしたところ、見事に既読スルーです(笑)
ガラスのハートかッ!!!
おっと、閑話休題。今日は話があっちこっちに飛んでよくないですね。
とにかく、佐伯は鈴木から要求を出されたけど、照子ちゃんの後押しもあり、その要求をうっちゃらかしておくことに。
この照子ちゃんって女はすごいよ。
ひとつ屋根の下にド変態のいとことストーカーの書生を住まわせながら、どちらも下に見て、2人を2人ともいいように振り回すんだから。
これは『痴人の愛』を読んでも分かるとおり、谷崎先生の好みなんでしょうね。
男は女性の魅力にあらがえず、結局はその下僕になるという……ある意味、女性としてはスカッとする展開なのに、ナオミにしろ照子にしろ、女もいけ好かない女なのは一体どうしてなんだろうか(笑)
それはまた今度研究するとして、佐伯くんが出て行かないと知った鈴木くん、どうするのかと思いきや、自分が家を出て行きました。
いや、なんでだよッ!!
……と、ツッコミたくなりますが、そこはそれ、鈴木くんだから。
しばらく経つとこーっそり戻ってきておりまして、
彼(佐伯)は庭下駄を穿いて、便所の蔭へ歩いて行ったが、中途で蜘蛛の巣に襟を掠(かす)められた。
見ると鈴木は、じめじめした掃除口の闇にうずくまって、羽目へぺッたり背中を押しつけ、雨蛙のようにどんよりと、眠るが如く控えている。
──谷崎潤一郎『続悪魔』
よりによって場所!!! 便所の蔭てッ!!!(妙に似合うけど)
このあと、3ページのうちにド変態 vs ストーカーの一騎打ちが演じられるんですけれども、ラストは是非ご自分の目で確かめていただきたい。
ついさっきまでビクビクしていたはずの佐伯くんが、妙に自信を回復して挑発するもんだから、大変なラストになっております。
……にしても、『続悪魔』のラストを読むには、『悪魔』も読まなきゃならないのよね……あの変態的なアレを……。
ところで、『悪魔』ではキーアイテムだったハンカチどこ行ったの??『続悪魔』では1回も出て来なかったんだけど(笑)
じゃあ、あの変態行為は必要なかったんじゃないかなぁ~~~……とも思いますが、とりあえずはメガトン級のインパクトを残すことには成功してるんで、あのくだりも必要っちゃ必要だったのかも。
いや、それにしても気になるわ。
「君のハンカチどこ行った??」って、なんか今やってるドラマのタイトルみたいだけど、結局捨てたんかな??
谷崎先生には1回草場の蔭から出てきていただいて、そこだけ教えて欲しいわぁ。
毎日恒例の宣伝を挟みまして。
ところで、その②。
『悪魔』というタイトルなんですが、それは『続悪魔』で、佐伯と照子が関係を持つ直前、これでもかと誘惑してくる照子に対し、佐伯が、
「悪魔! 悪魔!」
【中略】
「照ちゃん、君は物好きに己を殺すんだ。己を気狂(きちが)いにさせるんだ。……女と云う奴は、みんなこう云う風にして、男を片っ端から腐らせるんだ」
──谷崎潤一郎『続悪魔』
と、言うところに由来しています。
このあとで抱く男も、抱かれる女もすごいよね(笑)
でも、妙な色気がある。Sっ気のある女性は、言われたらたまらんのかもしらん。
こんなセリフを書ける谷崎先生が、やっぱりいちばんの悪魔だよ。って、オチなんじゃない??