山口夢Official Blog

物書き(小説家・シナリオライター)の山口夢です。

変態も行き過ぎるとさすがに引く―谷崎潤一郎『悪魔』―

さすがの私(?)も、この変態には軽くドン引きだな、って話で。

 

痴人の愛』を読んで以降、

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全集に掲載されている谷崎潤一郎先生の短編をちまちま読んでいるワケなんですけれども。

いやぁ、谷崎先生のことは以前からド変態だと思っておりましたし(※褒め言葉)、『痴人の愛』を10年ぶりに読み返しまして、その考えをより一層深くしたはずではありましたが、うん……あなどってたわ、谷崎先生のことを。

その作品、タイトルがずばり、

 

『悪魔』

 

やだぁ……『痴人の愛』のナオミちゃんだって、史上最強の悪魔って感じだったのに……なんてストレートなタイトル……しかし、『悪魔』が書かれたのは明治45年であり、『痴人の愛』より前のこと。

谷崎先生は、つねに新しく強烈な悪魔を生み出していく作家らしい……怖い……。

 

それはさておき、今日もいつものとおり、本文を引用して感想を書いていきたいところなんですけど、あの……割とマジで気持ち悪いから、引用するけど、しちゃうんだけど、そこは自己責任で読んでくださいね。

古今東西、フィクション・ノンフィクションに関わらず、ありとあらゆる変態について読んできた私も、「うわっ」って言ったくらいだから(笑)

ほんと、自己責任で。

私にクレームを入れられましても、その……書いたのは谷崎先生なんで(※華麗なる責任転嫁)

いいですか、引用しますよ?? しますからね??

 

……さて、『悪魔』の主人公は佐伯くん。

名古屋から東京へ出てきたばかりの学生で、叔母さんの家に間借りをすることになりました。その家には、年頃の娘がひとり。

……うん、そうだね。

この時代の小説は、どうもこういった設定が多いようです。

ちょっと前に読んだ二葉亭四迷先生の『浮雲』も、似たような設定でした。

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で、お決まりのごとく、その家の娘・照子にうっすら惹かれていく佐伯くん。

そんなある日──佐伯くんの部屋へ遊びに来た照子ちゃんは、風邪を引いておりました。

散々勝手に喋った挙句、佐伯の部屋を出て行く照子ちゃん……は、鼻水をかんだハンカチを、その場に置き忘れて行ったご様子。

(※はいっ、引用するよ!!!)

四つに畳まれた手巾(ハンケチ)は、どす黒い板のように濡れて癒着(くっつ)いて、中を開けると、鼻感冒(かぜ)に特有な臭気が発散した。水洟(みずばな)が滲み透して、くちゃくちゃになった冷たい布を、彼は両手の間に挿(はさ)んでぬるぬると擦ってみたり、ぴしゃりと頬ぺたへ叩き付けたりしていたが、しまいに顰(しか)めッ面をして、犬のようにぺろぺろと舐め始めた。

──谷崎潤一郎『悪魔』 

ごめん、さすがに気持ち悪い

これならまだ、好きな子のリコーダー舐めたり、サドル盗んだりするほうが理解できるよぉぉぉ~~~~……それ以上の、ここには書けないあれやこれや、よりも気持ち悪いよぉぉ……。

おい、佐伯くんよぉ……そのアイテムを後生大事に持ち歩くんじゃないよ、怖いよ……心のなかで「俺には誰にも知らない秘密の楽園があるんだ(※意訳)」とか言ってるよ、やめてよ……。

 

この作品、恐ろしいことに『続悪魔』があり、今でいうところの上下巻に相当するらしいんです……まだ続くの、この物語……やだ……。

とりあえず、今夜続き読むけども……。

怖いよ、谷崎先生。何より、これを27歳の時に書いてることがすげぇ怖いよ。どんな27歳だよ、26歳までに何があったんだよ……。

これ、『痴人の愛』と同様、魅力あふれる照子ちゃんが「悪魔」ってことなんだろうけど、今のところ佐伯くんのほうが悪魔感ある……悪魔に魅せられた人間も悪魔になるってことなのかなぁ……いや、ゾンビか。

 

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毎日恒例の宣伝を挟みまして。

この全集、巻末に井上靖先生による解説がついてるんですけど、『悪魔』『続悪魔』についての解説の最後に、こんなことが書かれていました。

作者はかなり書きにくい題材を強引に捻じ伏せている感じで、その執拗さがある初々しさで作品全体から感じとられる。

──井上靖谷崎潤一郎Ⅰ』解説 

なんか、私の知ってる初々しさと違う(笑)

井上先生は文体や表現について「初々しい」と述べていることは分かるんですが、中身が中身だけに、初々しいってなんだっけって気分だよ。

どうしてくれんだよ、谷崎先生(笑)

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