昨日のブログ、「このクリムトさんの女ったらしめ!!」みたいな内容に終始してしまって、お前せっかくの「クリムト展」で何を見てきたんだよ、って感じになっちゃったじゃないですか。
学芸員資格を持ってるとまで言っておいて、昨日のブログで終わりにするのはいかがなもんかなぁと反省致しまして。
今日はちょっと真面目に書こうと思うんですけど……
真面目に書くと、アクセス数減るんだよなぁ~~~!!!
……まあいいや(笑)
とりあえず、ちょっと真面目に書きますね。
画家グスタフ・クリムトが活躍した1900年代のウィーンでは、日本美術が流行していたそうなんです。
博覧会やなんかで、浮世絵を始めとする絵画が多く紹介されたんですね。
日本は江戸末期から国際博覧会へ出品するようになり、ヨーロッパに「ジャポニズム」が広まったということです。
少し時代は下りますが、大正時代には日本でも博覧会ブームが起こり、『大正ロマン 東京人の楽しみ』(青木宏一郎著、中央公論新社)によると、
大正時代の三大レジャーは、博覧会に花見、そして映画である。これらには、市民の半数以上(延べ一〇〇万~一〇〇〇万人)が参加または動員されている。
【中略】
博覧会はこの他にも頻繁に開催され、その意味では大正時代は「博覧会の時代」とも言えそうだ。これらのイベントは、官製色が強く多少窮屈なレジャーではあったが、大勢の市民が参加し、人々に遊ぶ機運を盛り上げるという効果があった。
──青木宏一郎『大正ロマン 東京人の楽しみ』
ってな感じで、博覧会は大人気。
森鴎外の日記にも、家族で博覧会へ出かけたことが頻繁に書かれているようです。
クリムトさんは日本美術にえらく感銘を受け、その作品にも日本美術の影響が色濃く反映されているのです。
たとえば、昨日も載せたこの画像なんですけど、
いちばん手前の、(これが昨日のメインテーマでしたが)深い関係があった弟の嫁・エミーリエ17歳の肖像。
この、クリムトさんが自身で手掛けた額縁を、よ~~~く見ると、梅の枝や笹っぽい植物等、日本らしい絵が描かれているんですね。
また、クリムトさんは日本美術を勉強するために、画集を多数所持しておりました。
そのなかの数冊が展示されていて、たまたま開かれていたページに掲載されていたのが、尾形光琳作「燕子花(かきつばた)図」。
……そうなんですよ。このブログへ度々遊びに来てくれている方は分かると思うんですけど、
つい先々月、根津美術館で観たばっかりなんですよ~~~~!!!
それにしても、美術ってすごいよね。
100年前の人と同じものを見て、その、100年前の人が一体何を感じ、どんな作品に昇華したのか、それも知ることができるっていう。
実際、今回のクリムト展のチラシになっている『ユディトⅠ』を見ると、
金ベースの背景に、濃紺のラインや宝石が散りばめられているんですよね。
モチーフはまったく違いますが、
色味が似ていて、(この『燕子花図』から影響を受けて描いたかどうか、ハッキリとは分からないけど)クリムトさんが日本美術に傾倒していたことはよく分かる気がしますよね。
……やっぱり、知識って面白いなぁと思って。
知識は天然のミステリーなんですよ。
博覧会のことにしたって、私は現在制作中のゲーム『うっかり探偵の大正事件録(仮)』の参考資料として読んだ本に書いてあったんですよ。
あっ、『うっかり探偵』は、これね??
で、ちょっと前に別の美術展で観た尾形光琳の『燕子花図』が、遠く離れたウィーンの画家・クリムトの美術展で、図録のなかに載っているのを見かけるっていう……。
うわぁ~~~~繋がった~~~~的な、快感。
知識の1個1個が伏線になっていて、その伏線が、なんの前触れもなく回収されていく、作り物のストーリーでは絶対にあり得ない、天然モノのミステリー。
「いやいや、あらかじめウィーンの美術史について予習して行ってたら、日本美術との関係性も分かってたでしょ」と、言う方もいるかと思いますが、それはそれ、予習した場合、予習した時に伏線が繋がって感動するんですよ。
世の中のありとあらゆるものは離れ離れの点じゃなくて、すべてが何かしらの線で繋がっているもんなんですね。
これだから本を読むのはやめられないし、もっとたくさんの知識を我が物にしたいなぁと思ってしまうのです。
そして、いつか天然モノに勝るとも劣らないミステリーを書いてみたいもんだぁね。
毎日恒例の宣伝を挟みまして。
大学生の頃、就活のために「適職診断」をおこなうと、必ず「研究者向き」と診断された山口です。
本人としては「クリエイター向き」という結果が出て欲しかったのに、何度やっても、ありとあらゆる診断をやっても、答えはひとつ「研究者」でした(笑)
当時の私は大変プンスカしていたんですが、この知識欲、やっぱり研究者向きだなぁと妙に納得してしまいます。
この仕事で食いっぱぐれたら、学芸員資格をおおいに利用して、どこかの美術館か博物館に雇っていただき、研究者の道へと進む可能性がなきにしもあらず……それもまた面白そうですが、もうしばらくは今の仕事であがいてもがいてをするつもりです。