『夢十夜』の簡単なあらすじなんかは、昨日のブログの中盤を読んでね。今日も本文を引用したネタバレがあるよ!! 嫌な人は、ここで回れ右しようね!! もう面倒だから回れ右用の画像も挟まないよ!!
えっ?? うん、今日はなんだか投げやりな気分なんだ!!! THE☆不安定!!! 何があったワケでもないんだけど、三十路だからね!!! 孤独をこじらせた三十路は不安定なんだよ!!! 以上!!!
……さて、こっからは真面目に書きましょうかね。
十夜分の夢を読んでみて、私がいちばん好きなのは「第六夜」。
運慶が護国寺の山門で仁王を刻んでいるという評判だから、散歩ながら行って見ると、自分より先にもう大勢集まって、しきりに下馬評をやっていた。【中略】
自分はどうして今時分まで運慶が生きているのかなと思った。どうも不思議なことがあるものだと考えながら、やはり立って見ていた。
運慶とは、運慶・快慶とセットで語られることが多い、鎌倉時代の仏像彫刻師です。
「どうして今時分まで運慶が生きているのかな」と思うってことは、この夢の舞台は主人公にとっての現代、=明治時代ということなんでしょう。
不思議なのは、夢なんでご愛敬。
運慶の仕事を見て、主人公の男は「よくもまあ、あんな器用に彫れるもんだなぁ」と思い、そんなようなことを独り言でつぶやいたんですね。すると、近くにいた男が、
「なに、あれは眉や鼻を鑿(のみ)で作るんじゃない。あの通りの眉や鼻が木の中に埋まっているのを、鑿と槌(つち)の力で掘り出すまでだ。まるで土の中から石を掘り出すようなものだから決して間違うはずはない」と言った。
運慶大先生、とんだ濡れ衣(笑)
渋い顔でカンカン鑿と槌を振るってるけど、周りの木くずがポロポロ落ちて、なかにある立派な仏像がジャジャーンと勝手に登場するってことでしょ??
んなもん、誰でもできんじゃねぇか!! って思うじゃん??
主人公の男も思っちゃったんだよね。
自分はこの時始めて彫刻とはそんなものかと思い出した。はたしてそうならだれにでも出来ることだと思い出した。それで急に自分も仁王が彫ってみたくなったから見物をやめて早速家へ帰った。
で、薪にしようと思ってとっといた手頃な木を、運慶よろしく鑿と槌でカンカンやってみるワケですよ。
自分は一番大きいのを選んで、勢いよく彫り始めてみたが、不幸にして、仁王は見当たらなかった。その次のにも運悪く掘り当てることが出来なかった。三番目のにも仁王はいなかった。自分は積んである薪を片っ端から彫ってみたが、どれもこれも仁王を蔵(かく)しているのはなかった。ついに明治の木には到底仁王は埋まっていないものだと悟った。
ちゃんちゃん♪♪ おあとがよろしいようで。
……あれ?? 落語かな??(笑)
しかし、話の運びといい、オチといい、非常に落語的ではございませんか。人から聞きかじったことを実践しようとして、失敗するいつものアレです。
なんなら、落語的なセリフが頭のなかで再現されました。
「へえ、そうかい。仁王ってもんはそんな簡単に彫れるもんかね、そいつぁ俺でも彫れそうじゃねぇか! よしっ、一丁やってみようかね!」
……なんてんで、なぜか主人公が町人風になっちゃったんだけど(笑)
漱石先生も、確か落語が好きだったんですよね。
『ドラえもん』でおなじみの、藤子・F・不二雄先生も落語が好き。
私が幼い頃から大好きで、繰り返し読んできたような先生たちは、みんな落語が好きなようです。
大学1年の頃、私が落語研究会に入ったのは、完っ全になんとなくで、それまで落語に触れたこともほとんどなかったんだけど、落研へ入ったあと、漱石先生も藤子先生も落語が好きだということを初めて知って、妙に感動したもんです。
私と漱石先生、藤子先生はまったくの他人で、漱石先生とは生きてる時代も違うのに、先生方の作品のなかに脈々と流れる「何かしら」が、私に影響を与えてくれていたのかなぁ、と。
非常におこがましい話ではありますが、
感性の遺伝
……というものが、この世にはあるのかもしれません。
私には1mm程度でも遺伝していればいいほうくらいの、非常に乏しい感性と才能ではありますが、それでもなぜか落語に惹かれ、落語に出会い、その数年後、落語研究会を舞台にした作品に携わり、初めての小説まで出版することができたんだから、すごくすごく、ありがたい話だなぁと思うんです。
未だに、日本の話芸に惹かれるのも、漱石先生と藤子先生のおかげなんだろうなぁ。
自分の好きな人、好きなものから感性が遺伝する。
「好き」を増やすことは、自分の感性を育てることにもなるのでしょう。
やっぱり「好き」は無敵だ。
あっ、ご興味のある方は『せんおち―千早大学落語研究会物語―』を買ってみてね!
……うんうん、あれ!? また『夢十夜』全然関係ない話になっちゃった(笑)
毎日恒例の宣伝を挟みまして。
『ドラえもん』も、よくよく考えてみれば、非常に落語っぽい話のオンパレードですよね。どのエピソードも、ものすごいクオリティの高い小噺って感じがする。
道具にも落語を参考にしたものが多いっていうのは有名な話だと思うんだけど、それはまたいずれ。