私が読書を始めたキッカケの夏目漱石先生──それなのに、そういえば『夢十夜』は読んでこなかったんですよね。
なんていうか、好きな作家先生の本を全部読んじゃうのがもったいなくて。私が読むのって、基本的に先生方は皆さんお亡くなりになってる作品ばっかりだから、いくら待っても新作が出ないんですよ。
ますますもったいないじゃん???
だからね、愛してやまない金田一耕助シリーズも、いくつか読んでないものがあるんですよ。
(※あっ、私が気持ち悪いオタク化してる金田一耕助シリーズに関する初期のブログも読んでね☆)
まあでもさ、人生どんなことがあるかも分からんから。
何があってもなるべく後悔しないように、もったいないとか言ってないで読んじゃおうかな、と思いまして。
……ってなワケで、本日は夏目漱石先生の代表作のひとつ『夢十夜』の身勝手感想文でございます。
今日も本文引用からのネタバレがありますんで、内容を知りたくない方は回れ右。
さっき会ったにゃんこの画像を挟んで、さあ参りましょう。
(※画像についての詳細は、私のTwitterを確認してください)
さて、漱石先生の『夢十夜』は、「第一夜」から「第十夜」まで、主人公の見た夢をつらつらと描いた、短編10本を繋げた作品です。
主人公は男。
しかし、ある夜は父親、ある夜は侍、ある夜はおそらく子ども、またある夜は、まったく夢には登場しない、神様視点に回ることも。
少し不思議で、ほとんど一貫性はない物語たち。
お話したいエピソードがいくつかあるんですが、今日は「第七夜」から。
なんでも大きな船に乗っている。
この船が毎日毎夜すこしの絶え間なく黒い煙を吐いて浪(なみ)を切って進んで行く。凄まじい音である。けれどもどこへ行くんだかわからない。
とりあえず、こんな夢。
日が昇って日が落ちて、日が昇って日が落ちて……何日経ってもどこにもたどり着かない船に、乗客の男は次第に心細くなってくる。
自分は大変心細くなった。いつ陸(おか)へ上がれることかわからない。そうしてどこへ行くのだか知れない。【中略】自分は大変心細かった。こんな船にいるより一層身を投げて死んでしまおうかと思った。
ほかの乗客と関わり合いになってみても、男は虚しくなるばかりで、とうとうひとつの結論を出します。
自分はますますつまらくなった。 とうとう死ぬことに決心した。それである晩、あたりに人のいない時分、思い切って海の中へ飛び込んだ。ところが──自分の足が甲板を離れて、船と縁が切れたその刹那に、急に命が惜しくなった。心の底からよせばよかったと思った。けれども、もう遅い。自分はいやでも応でも海の中へはいらなければならない。ただ大変高く出来ていた船と見えて、身体は船を離れたけれども、足は容易に水に着かない。【中略】
自分はどこへ行くんだかわからない船でも、やっぱり乗っている方がよかったと始めて悟りながら、しかもその悟りを利用することが出来ずに、無限の後悔と恐怖とを抱いて黒い波の方へ静かに落ちて行った。
これで、「第七夜」はおしまい。
この「急に命が惜しくなった」と「足は容易に水に着かない」、「無限の後悔と恐怖とを抱いて」の部分を読んで、ふと思ったんですよね。
ああ、地獄ってないんだろうな、って。
天国はあると思っているタイプで、その辺の主義主張はこの記事を読んで欲しいんだけど、
まさか『夢十夜』を読んで、地獄がないと確信することになるとは思いませんでした。
なんでかって言うと、たとえば「第七夜」の男みたいに船の上から飛び降りたとして、その瞬間、きっと身体と魂は別個になり、身体だけはひゅーーーーっとあっという間に落ちていくのに、魂だけは「やめときゃよかった」「戻りたい」と思いながら、じわじわじわじわ、海に近づいていくんだろうな、って。
じわじわ近づいているはずなのに、永遠たどり着かないの。
ずっとずーーーーっと果てしない後悔と恐怖を抱いて、場合によっては、苦しんで波に巻かれていく自分の身体を眺めながら、終わらない時間を過ごさなきゃいけないの。
そっちのほうが怖いでしょ。自分の愚かさを呪うでしょ。
まあ、地獄もそういう場所らしくて、死んでも死んでも生き返って、同じ責め苦を味わうことになるみたいだけど。
昔、池袋の新文芸坐っていう名画座で、日活ロマンポルノを代表する監督・神代辰巳特集が開催された時、『地獄』という、まんまなタイトルの映画を観たのね。
今の技術からしてみれば、なんとちゃっちいセットの映画なんだ、と感じる人が大半なんだろうけれど、映画を観終わって劇場から家へ帰る道すがら、私はしみじみ「ああ、地獄に落ちたくはないなぁ」と思ったのを覚えいるのです。
それはたぶん、セットの作り物感を凌駕する、監督や脚本、演者の力量なんでしょうね。
とにかく、ものすんごい後味の悪~~~~い映画。
でも、それよりも、終わらない現実のなかで、いつの間にか後悔が「やっぱりもういっそ死んでしまいたい」に戻っても、永遠永遠、自分の愚行を責め立てられる世界のほうが、シンプルに「嫌だな」と思ってゾワゾワしました。
まあ、すべては私の勝手な想像なんだけど。『夢十夜』も、ほとんど関係ないっていうね(笑)
で、結局昨日も寝つけなかったよねーーーー、案の定、今朝は寝坊したよねーーーーー。
せっかく『夢十夜』を読んだのに、見た夢も覚えてないよ、ちくしょうめ。寝る前に読書するの、私の場合は異様に興奮しちゃっていけないんだろうなぁ(笑)
毎日恒例の宣伝を挟みまして。
そういえば、最近短編小説を書いています。どこに発表するアテもないんだけど。
いやいや、読書に影響されたのでは決してなく、先に短編を書く予定があって、このごろせっせと本を読みふけっているワケですよ。まあ、どっちでもいっか。
書き上がったら、このブログでもどこでも、どっかには載せましょうかぁね。
んじゃま、短編の執筆に戻りまーす。