山口夢Official Blog

物書き(小説家・シナリオライター)の山口夢です。

令和視点的身勝手読書感想文―二葉亭四迷『浮雲』―

昨日、二葉亭四迷の『浮雲』を読んでいることを書きましたが、

blog.yumeyamaguchi.com

あのあとすぐに読了致しましたので、感想をつらつらと書きたいんですけど……

 

主人公の文三が、思っていたよりもヤバいヤツかもしれない。

 

……という視点に立って書くつもりのため、『浮雲』を熱烈に愛している方は回れ右。これから読む予定があって、ネタバレを避けたい方も今日のブログは読まないでネ。

熱があるなかで読んだもんで、解釈を間違えていたらごめんなさい。

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回れ右用の画像も挟んだことだし、さあ参りましょ。

 

さて、先にちょろっと書きましたが、『浮雲』の主人公は文三くん。物語は、文三くんが会社をクビになるところから始まります。

この文三くん、叔父さんの家に間借りしており、ひとつ屋根の下に暮らすいとこ・お勢に恋をしている。また、お勢も文三に惚れているんじゃあないか、という気配。

お勢の両親も、ゆくゆくは2人を夫婦にしようと考えているようです。

しかし、そこに現れたるは恋のライバル・昇くん。彼は文三くんの元同僚でご近所さん、ちょこちょこと遊びにやってきます。

 

作中の人間関係は、だいたいこんな感じ。

 

とにかく、文三くんは失業中。

仕事はできる(らしい)けど、上司に媚びへつらうようなマネはできない不器用なタイプ。……っていうか、おそろしくプライドが高い。

課長のご機嫌を伺うことを「鄙劣(ひれつ)なこと」なんて言っちゃう。そういう態度がもとでクビになったとかいないとか。

一方の昇くんはお調子者。課長のご機嫌を取りまくって、お見事給料もUP。お勢のお母様にも上手く取り入り、完全なる勝ち組でございます。

そんな昇くんのことを、文三は、

昇ごときあんな卑屈な軽薄な犬畜生にも劣った奴(後略)

──二葉亭四迷浮雲』 

……と、思っている。文三(無職)のほうが。

お前、とりあえず新しい職を探しなさいよ、と思うのですが、2階の自室にこもり切って、お勢のことばかり考えている。

いや、働けよ。職探せよ。

とにもかくにも仕事をしないことにゃーライバルの昇くんと肩を並べる以前の問題じゃあございませんか。しかし、なんだかのらりくらりしている。

 

そのうち、もともと働いていた職場で、クビになったうちの2、3人を復職させるという噂が持ち上がります。

そこは常日頃から課長のご機嫌を取っていて仲良しの昇くん。文三と課長の「橋渡し」をしてもいいと、文三くんに持ち掛けます。

ますますいい男やんけ、昇くん。

そして、案の定それを断る圧倒的小さい男文三くん───ッ!!!

断った!! 断ったよ、この人!! 千載一遇のチャンスを!!!

まあ確かに、富士山よりも高いプライドをお持ちの文三くん、恋のライバルの手を借りるなんざぁ自分のポリシーに反するのかもしれませんが、そこはグッと我慢して歯を食いしばり、課長にも頭を下げて復職すりゃあ、まだ見どころがあったものを!!!

おまけに、昇くんから「痩せ我慢なら大抵にしておく方がよかろうぜ」と忠告されると、プッチーン来た。

「君(昇)とはしばらく交際していたが、モウ今夜ぎりで……絶交してもらいたい」

──二葉亭四迷浮雲 

いや、子どもかッ!!!!

あとはもう昇くんがなんと言っても頑として「絶交だ」と言って聞かない文三くん。

 

……なのに翌日、「廉恥も良心も棄ててしまッて、課長の所へ往ッてみようかしらん」と、悩み始める。

なんでだよ!! と、ツッコみたくなりますが、そこはそれ、ぐずぐず腐っていた文三くんがせっかく働く気になったんだし、まあ見逃してあげようと思います。

しかし、だ。

課長のところへ行くんなら、昇くんにお願いをしなきゃならない。昨日、みずから絶交を言い渡した昇くんに。っていうか、自分をコケにしたにっくき昇くんに。

それは死んでも嫌な(安定の人間が小さい)文三くん。散々悩んだ結果、出した答えは、

久しく苦しんでいるうちに文三の屈託もついにその極度に達して、たちまち一ツの思案を形作ッた。いわゆる思案とは、お勢に相談してみようという思案で。

──二葉亭四迷浮雲

ごめん、ツッコむね?? いや、なんでだよ!!!

ぐずりぐずりとかっちょ悪~~~~く悩んでいる胸のうちを、なんで惚れた女に相談すんだよ!!! 相談されてもお勢だって困るよ!!! たとえお勢が文三に惚れてたとて、100年の恋も冷めちまうよ!!!!!

……とは、みじんも思わない文三くん。

お勢に相談する、きわめて上策。おそらくはこれに越す思案もあるまい。

──二葉亭四迷浮雲 

まさかの!? まさかの上策!?

 相談を懸けたらとんだ手軽ろく(お勢が)「母がなんと云おうとかまやアしませんやアネ、本田なんぞに頼むことはおよしなさいよ」と云ッてくれるかも知れぬ。

──二葉亭四迷浮雲

文三くん、脳みそが極めてポジティヴでハッピーにできていらっしゃる~~~~!!! だから無職でものんきにしてるんだネ~~~~!!!

 

結果、あっさりと「いいじゃありませんか、本田さんに依頼したッて」と、お勢ちゃんから言われてしまいます。そりゃそうだよ、文三働けよ、文三

そして、案の定というより、もはや案の定のナナメ上を行く文三くん、とうとうお勢ちゃんにも噛みつきます。

「あんな卑屈な奴に……課長の腰巾着……奴隷……」

「奴隷と言われても恥とも思わんような、犬……犬……犬猫同前な奴に手を杖(つ)いて頼めとおっしゃるのですか」

──二葉亭四迷浮雲 

負け犬の遠吠え感がすごい。これほどまでに見事な負け犬の遠吠えがあったであろうか。

さらに、のらりくらりとはぐらかし、答えるのを嫌がるお勢を問い詰めて、とうとう「ハイ本田さんは私の気に入りました(原文ママ)」と言わせます。

自分の傷を自分でえぐっていくスタイル。

か~ら~の~、聞いといての逆ギレ来ました!!!!(やっぱりね!!)

「それじゃ……それじゃこうしましょう、今までのことはすッかり……水に……」

「この場になッてそうとぼけなくッてもいいじゃありませんか。いッそ別れるものなら……綺麗に……別れようじゃ……ありませんか……」

「モウ言うこともない聞くこともない。モウこれが口のきき納めだからそう思っておいでなさい」

──二葉亭四迷浮雲 

また絶交した。

っていうか、別れようって……ここへ来て気づいてしまったんだけど、物語が始まって、この後半まで、お勢ちゃんは1度だってハッキリと文三くんのことを「好き」だとも「気に入った」とも言ってないんだけど……。

文三くん、頭のなかでとっくにお勢ちゃんと付き合ってた!?

いや、ヤバくね!?

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毎日恒例の宣伝を挟みまして。

あかん、1回じゃ終わらなかった。明日も『浮雲』感想文続きます(笑)

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