山口夢Official Blog

物書き(小説家・シナリオライター)の山口夢です。

読書とは、行為そのものがミステリーである―現代の悪魔とは何か―

また、作風とまったく合致しない話していい??

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昨日から、また新たな1冊を読み始めたんですけど、

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結局、2度挫折した『現代殺人百科』に再挑戦することにしました。やっぱり、中途半端になってるほうから片づけたいじゃん??

(※あ、ちなみに体調は良好です。今日はしっかり原稿も書きました)

 

で、昨日は(たぶん)熱もあったから、冒頭ちょろーっとだけ読んだんですよ。

そこにはこんなことが書いてあって。

ここで問題なのは、その人間(殺人者)の思考が魔術的思考に傾きやすいということである。【中略】彼はその思考に基づいて責任を押し付ける対象を選択する。そのスケープゴート(身代わりの山羊)の対象は集団のこともあれば、個人のこともある。

【中略】

人間はすべて自由でなければならないという思想に養われた曖昧な鬱屈感が社会に蓄積する。自分が自由でないとすれば、だれかにその責任を取らせる。言うまでもないが、日常生活では人間はすべて現実主義者であることを強いられる。生計をかせぐ。ほしいものを手に入れるために努力する。しかし、この回転がつまずくと自己憐憫のムードにたちまち落ち込む。まわりで身代わりの山羊を探す。

──『現代殺人百科』コリン・ウィルソン 

つまりどういうことかと言うと、自分の人生が上手くいかなくなった時、「くっそー、なんでだよ!!」と怒り、その、自分の人生が上手くいかない理由を、他人のせいにする。

他人とは、個人または集団、どちらの場合もあり、さらにもっと簡単に言うと、「俺の人生が上手くいかないはアイツのせいだ!!」とか「政治のせいだ!!」とか「社会のせいだ!!」と、要するに責任転嫁をするってことです。

それが、スケープゴート。身代わりの山羊。

社会や政治はまだ、まだかろうじて上手くいかない理由に関連はあるかもしれないけど、一切関連のないものに責任転嫁するパターンもあり、たとえば人種や国籍、性別、弱者に怒りを抱くこともある。

その、まったくもって論理的ではなく、飛躍した考え方を、本のなかでは「魔術的思考」と表現しているワケです。

 

ここで、つい最近まで読んでいた『恐怖の博物誌』の話に戻るんだけど、

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この書籍の基本は、「死や病気、事故、天災、飢餓など、人は説明のつかない恐怖に理由が欲しくて、いにしえより悪魔や呪い、幽霊、魔女を生み出した」という理論です。

「もぉ~っ、病気つらい! 苦しい! なんで私が病気なんかに!! 悪魔に憑りつかれてるんだ!!」みたいな??

 

この、『恐怖の博物誌』的考え方は、『現代殺人百科』が言うところの「魔術的思考」に通じる部分がありよなぁ、と思って。

現代人も死や病気、事故、天災からは逃れられないけど、なんだかんだいって、たいていの人には屋根つきの家があるし、飢えることも非常にまれで、死や病気やその他云々も、とりあえず自分とは縁遠いものだと信じている。

そんななか、現代人が1番怖いものって、「上手くいかないこと」なのかな、と。

(あくまでも戦争や飢饉で人がバッタバッタ死んでいた時代とは違い)ある程度の生活が保障された現代で、次に人は「成功」を夢見る。

『現代殺人百科』が書かれた1983年より、SNSというものが発達した現代では、(それがたとえ話を盛った見栄だとしても)周囲の人間がみ~~~んな成功しているように見えて、ちょっとの失敗も、大きな挫折のように思える、のかもしれない。

挫折は恐怖だ。

だからといって、無関係な人間を殺していいなんてことはまったくなく、じゃあ、私が何を考えているかというと、たとえばもし、現代人が挫折という恐怖をもとに悪魔的な「何か」に責任転嫁をするとして、それは一体なんだろう、って。

 

現代人は、どんな悪魔を生み出すんだろう。

 

まあ、現実問題として、今の時代は好みも考え方も細分化されてるから、膨大な数の人間が同じ思考、同じ妄想に憑りつかれてパニックを起こすことはまれなんだろうけど、物語のなかではそれが可能だから。

考えるだけならタダ!! そして、それが私の仕事。

『現代殺人百科』という殺伐とした本を読みながら、(やっぱりちょっと殺伐とはしてるけど)まったく別のアイデアを練っていたりするのです。

 

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毎日恒例の宣伝を挟みまして。

それにしても、『恐怖の博物誌』と『現代殺人百科』、まったく別の著者、まったく別の国で出版された本が、私の勝手な解釈だけど、ひとつに繋がった。

なんていうか……そもそも点と点とも思っていなかったものが、勝手に繋がって線になる瞬間ってゾクゾクするよね。こういう展開大好き。

知識が伏線になって、脳みそが勝手にそれを回収してくれる。

読書という行為そのものがミステリーだぁね。まったく予測できないミステリー。

いやぁ、楽しいなぁ。

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