山口夢Official Blog

物書き(小説家・シナリオライター)の山口夢です。

【物書きの本棚】100年前の日本人は、いかにして暮らしていたか

昨日から、ちょびちょびっとだけ伸びた私のツイートがありまして、

面白いよね、「夫の首をしめる工夫を講じなさいまし」。

これは大正3年『読売新聞』の「身の上相談」に、赤坂の主婦から寄せられた悩みと、その解答だそうです。

なかなかアグレッシブな答えだと思いません!? 約100年前の話ですよ??

 

この投稿を知ったのは、こちらの本。 

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『大正期の家族問題 自由と抑圧に生きた人びと』(湯沢雍彦著、ミネルヴァ書房、2010年)、ISBN番号は、978-4-623-05668-2です。

タイトルのとおり、大正という時代を、家庭という観点から描いた本となります。

大正時代といえば、第一次世界大戦による好景気で成金が出現、文化的には映画や演劇が連日上映・上演され、モダンで華やかな時代と思われがちですが、そこはどうして、この本を読むと、都会と農村の格差、富豪と庶民の格差、男女の格差……等、さまざまな格差のあることが分かるのです。

読めば読むほど、今とそうたいして変わんないな、と。

 

しかし、そこはやっぱり100年前ということで、まあ驚かされることもあるんですよ。

これもまた「身の上相談」に投稿されたものなのですが、理由あって離婚し、父親のほうが3歳の男の子をひとりで育てているけれど、あまりに薄給で育児にも手が回らず、「何誰(どなた)か恵深い方に此子(このこ)を貰っていたゞきたいと思ひます」というのです。

そんな相談に対し、記者が、

 

「何誰か読者さんの内に、こういう子供を貰つて育てゝ見やうと思ふ方はありませんか、若(も)し有りましたら本社に御紹介下さい、お世話を致します」

 

と、その仲介を買って出るんですね。いや、びっくり。

これはさすがに今の時代ではあり得ない回答です。

この呼びかけに応じた者がいたのか、いなかったのか、果たしてこの親子はどうなったのか───結末は一切描かれておりませんが、親も子も、幸せな人生をまっとうしたことを祈るばかりです。

大正時代は、養子縁組に対してハードルの低い時代だったんでしょうね。

ある人に、この投稿の話をしたところ、「今の時代にこそ、こういう制度が必要なのかもしれないね。子どもを虐待するような親が多過ぎる」と言われましたが、そういう親は、きっと子どもを手放すことをしない。悲しいかな。

一方で、今回紹介した大正時代のシングルファザーは、子どもに大きな愛情を持っているのですよ。

事実、投稿には「私の口から申すと親馬鹿に聴えますが、裸体にすると恰(まる)で小さい金時のやうです(※褒めてる)」と書かれているんですね。

 

愛があるからこそ、手放す。

 

本当に、ふたりともが幸せな一生を送っていて欲しいと思います。

 

この本には、その他、大正時代になって登場した月給取り(サラリーマン)の生活、女性の職業進出に関する両親との軋轢、当時の離婚原因、柳原白蓮事件、大衆文化と庶民の関わり方……等々、興味深いトピックが並んでおりますが、もっとも興味を惹かれたのは、岐阜県白川村や富山県五箇山における大家族のルールなんですけど、

 

それ書いてたら、こっからもう3000字くらいの長きに渡るレポートになっちゃう!!

……ということで、また今度。時間のある時に。

 

本当に面白い本なんですよ、『大正期の家族問題』。

100年前の家族をとおして、平成最後の年に、今という時代を読み解く。

私の頭ではどれだけ読み解けているのか分かったもんじゃありませんが、作品の描く方向性をちょっとだけ変えるくらいには、影響を受けました。

よろしければ、皆様も是非に。

www.yumeyamaguchi.com